SESでよくあるトラブル事例と解決方法|未払い残業代請求など

SES(システムエンジニアリングサービス)は、多くのエンジニアが活躍する働き方の一つです。しかし、その契約形態や労働環境の特性から、トラブルに巻き込まれるケースも少なくありません。特に20代・30代のエンジニアにとっては、就業前にしっかりとした知識を持っておかないと、思わぬ問題に直面する可能性があります。

本記事では、SESでよくあるトラブルの事例とその原因、未然に防ぐ方法、さらには問題が起きた際の解決策について詳しく解説します。SESエンジニアとして安心して働くために、ぜひ最後までご覧ください。


目次

SESで発生しやすいトラブルとは?

SESの契約形態とトラブルの関係

SESは「準委任契約」による働き方が基本となっています。この契約は、成果ではなく業務の遂行に対して報酬が支払われるというものです。しかし、SESをよく理解していない企業やクライアントがいると、契約内容があいまいになり、トラブルの原因となります。

例えば、本来SES契約では「業務を遂行すること」に対して報酬が支払われるはずですが、クライアント側の認識が「成果物に対して支払う契約(請負契約)」であった場合、成果物を納品できなかったことを理由に報酬が支払われないといった問題が発生することがあります。このようなケースは、契約書を詳細に確認し、企業側としっかりと認識をすり合わせることで防ぐことが可能です。

また、SESの契約は、クライアント、SES企業、エンジニアの3者の関係性によって成り立つため、どのような形で雇用されるのかを理解しておくことが重要です。自分が派遣される立場になるため、契約内容を明確に把握しておかないと、業務範囲が曖昧になったり、不当な条件を強要されることもあります。

SESエンジニアが直面する主な問題点

SESエンジニアとして働く中で、特に多くのエンジニアが直面する問題には、以下のようなものがあります。

  1. 契約外の業務を押し付けられる
    契約時にはシステム開発業務とされていたのに、実際の業務内容がサポート業務や事務作業に変わってしまうことがあります。契約書に明確な業務内容が記載されていない場合、クライアント先の都合で業務を変更される可能性が高まります。
  2. 給与や残業代が適切に支払われない
    SES企業の中には、残業代の支払いを適正に行っていない会社もあります。固定残業代が導入されているケースでは、残業時間がどこまで考慮されるのかを確認しないと、想定以上の長時間労働を強いられることもあります。
  3. クライアント先でのハラスメント
    SESの働き方では、エンジニアはクライアント先に常駐することが多いため、SES企業のサポートが行き届かないことがあります。クライアント先でハラスメントを受けても、相談する相手がいない状況になりがちです。
  4. スキルアップの機会が少ない
    SESエンジニアとして働くと、目の前の業務に追われ、十分なスキルアップの機会が得られない場合があります。特に、単純作業が中心の案件に長期間アサインされてしまうと、成長が止まり、キャリアアップが難しくなることもあります。
  5. 契約解除時にトラブルが発生する
    SESでは、クライアント都合で契約が終了することもあります。しかし、その際に次の案件がすぐに決まらないと、待機期間が発生し、給与が減少する可能性があります。また、契約解除を告げられるタイミングが直前になってしまうと、転職や他の案件探しに十分な時間が取れないこともあります。

トラブルが発生しやすい状況とその背景

SESのトラブルが発生しやすいのは、以下のような状況が背景にある場合です。

  • 契約内容を十分に確認せずに就業する
    エンジニア自身が契約書の内容をよく理解していないと、トラブルに巻き込まれるリスクが高くなります。特に、業務内容や労働時間、給与の詳細が曖昧な場合、働いているうちに「話が違う」と感じることが増えてきます。
  • 人材不足の現場にアサインされる
    SESは人材不足を補うための形態であるため、常にエンジニアが必要とされる状況が続きます。しかし、エンジニアの数が不足している場合、無理な業務を任されたり、本来の契約と異なる業務を要求されることもあります。
  • 契約更新のタイミングでトラブルが発生する
    SES契約は基本的に「3か月更新」「6か月更新」といった短期間の契約が多いため、契約更新のたびに条件が変わる可能性があります。契約の延長が直前まで分からないことも多く、転職やキャリア形成の計画を立てにくいという問題があります。
  • クライアント先とSES企業の意思疎通が不足している
    SES企業は、エンジニアとクライアントの間に入っているものの、実際の業務内容や職場環境を細かく把握していない場合もあります。そのため、トラブルが発生しても適切な対応を取れないことがあり、エンジニアが孤立する原因になります。

このような背景を知っておくことで、事前にリスクを回避するための意識が高まります。トラブルが発生しやすい状況に気づいたら、早めに相談し、対策を講じることが大切です。

SESのトラブル事例とその原因

SESでの働き方にはメリットもありますが、契約形態の特性上、エンジニアが不利な状況に追い込まれることもあります。ここでは、実際によくあるトラブル事例 をもとに、その原因と解決策について詳しく解説していきます。


未払い残業代や給与未払いのケース

SES業界では、給与未払いや残業代の未払い が発生することがあります。特に、中小規模のSES企業では、資金繰りが厳しくなると給与の支払いが遅れるケースが報告されています。また、「固定残業代込み」 という形で給与を設定し、本来支払われるべき残業代が未払いになることもあります。

【事例】

AさんはSES企業に所属し、クライアント先で月160時間の勤務が契約されていました。しかし、プロジェクトの都合で業務量が増え、実際には200時間を超える残業が発生。それにもかかわらず、SES企業からは「契約上、固定残業代に含まれているから追加の支払いはできない」と言われ、適切な賃金が支払われませんでした。

【原因】

このような問題が起こる背景には、以下のような原因があります。

  • 契約書に残業代の具体的な計算方法が明記されていない
  • 企業側が「SESエンジニアはみなし労働制のように扱える」と誤認している
  • SES企業の資金繰りが悪化し、給与未払いが発生

【解決策】

未払い残業代や給与未払いが発生した場合、適切な対応を取ることが重要です。

  1. 勤務記録をしっかり残す
    勤怠管理システムのログやメールの送受信履歴を保存し、労働時間を証明できるようにしておく。
  2. SES企業と交渉する
    まずは会社に対して正式に請求する。企業側が応じない場合は、次のステップに進む。
  3. 労働基準監督署へ相談する
    証拠を持って労働基準監督署に相談し、企業に対して是正勧告を出してもらう。
  4. 弁護士や労働組合を活用する
    深刻な場合は、労働問題に強い弁護士や、ITエンジニア向けの労働組合に相談し、法的措置を取る。

契約と異なる業務を強要される問題

SES契約を結んだ際に、「システム開発業務を担当する」と説明を受けていたのに、実際にはヘルプデスクや一般事務作業を任されるケースもあります。このような状況は、契約書の業務内容が曖昧な場合 に起こりやすく、クライアントの都合でエンジニアの業務範囲が勝手に変更されてしまうことがあります。

【事例】

Bさんは、Javaを用いたWebアプリ開発の案件でSES契約を結びました。しかし、クライアント先に常駐すると、実際に任されたのはExcelを使ったデータ入力や、ユーザーサポート業務でした。スキルアップを期待していたのに、まったく違う業務をやらされ、キャリアの方向性が狂ってしまいました。

【原因】

この問題が発生する背景には、以下のような要因があります。

  • 契約書に業務範囲が明確に記載されていない
  • SES企業がクライアントとの交渉を怠り、業務変更に対して適切な対応を取らない
  • クライアント側の都合で人手不足の業務に回される

【解決策】

契約と異なる業務を強要された場合、以下のような対応を検討しましょう。

  1. 契約書の業務内容を確認する
    業務範囲が契約書に明記されていれば、それを根拠に業務内容の修正を求めることができる。
  2. SES企業に相談し、交渉を依頼する
    自分で直接クライアントに交渉するのではなく、所属するSES企業の担当者に改善を求める。
  3. 対応が難しい場合は契約解除を検討する
    もし改善が見込めない場合は、転職や他の案件への移動を検討することも一つの手段。

クライアント先でのハラスメント事例

SESエンジニアはクライアント先に常駐する形で働くため、職場環境の管理がSES企業の手が届きにくい という問題があります。そのため、クライアント先でハラスメントを受けても、すぐに解決できない場合があります。

【事例】

Cさんはクライアント先での業務中、上司から「どうせSESなんだから責任感を持つ必要ないだろ」と軽視され、業務上の発言権も与えられませんでした。さらに、飲み会では他の正社員から見下した発言をされ、精神的なストレスを抱えるようになりました。

【原因】

SESエンジニアはクライアント先の正社員と異なり、外部の人間として扱われるため、パワハラや差別的な対応を受けることがあります。また、SES企業がクライアント先の職場環境を十分に把握していない場合、問題が発生しても適切な対応が遅れることがあります。

【解決策】

  1. ハラスメントの証拠を集める
    メール、チャット履歴、録音など、ハラスメントの証拠を確保する。
  2. SES企業の担当者に相談する
    クライアントとの契約を見直してもらうか、別の現場への異動を依頼する。
  3. 社外の相談機関を利用する
    労働局のハラスメント相談窓口を利用することで、法的な対応が可能。

SESのトラブルを防ぐための対策

SESでの働き方において、トラブルを未然に防ぐためには、契約内容をしっかり確認すること職場環境に関する意識を高めること が重要です。ここでは、具体的な対策について詳しく解説していきます。


契約内容を詳細に確認する重要性

SESで働く際に最も重要なのが 契約内容の確認 です。契約書の内容をしっかりと理解せずにサインしてしまうと、後々トラブルに発展する可能性があります。特に、以下の項目は必ずチェックするようにしましょう。

1. 業務内容の明確な記載

契約書には、業務内容が 具体的に 記載されていることが重要です。
「システム開発業務」とだけ書かれていると、クライアントの都合で 保守運用やサポート業務など、開発とは異なる仕事を任される 可能性があります。

2. 残業代の支払い規定

給与体系についても細かく確認する必要があります。
「固定残業代込み」と書かれている場合は、どの範囲までが固定残業代に含まれているのか を事前に確認しましょう。また、「時間外労働が発生した場合の追加支給」についても明記されているかチェックすることが大切です。

3. 契約更新や解除のルール

SES契約は 3か月更新や6か月更新 などの短期間で更新されるケースが多く、契約満了のタイミングで突然終了することもあります。
「契約解除の際の通知期間」がどれくらいなのかを確認し、急な解雇に備えられるようにしましょう。

4. 待機期間中の給与について

契約が終了し、次の案件が決まるまでの間に「待機期間」が発生することがあります。
この期間中の給与支払いがどうなるのか、契約書に明記されているかを必ず確認しましょう。


残業代や給与未払いを防ぐためのポイント

SES企業の中には、未払い残業代給与遅延 を発生させる企業もあります。そのような事態を防ぐために、以下の点に注意しましょう。

1. 勤怠記録を自分で保存する

SES企業が適切に勤怠管理を行っていない場合、残業時間の記録が曖昧になり、未払い残業代が発生する 可能性があります。
そのため、自分で労働時間を記録しておくことが重要 です。
具体的には、以下のような方法で記録を残しましょう。

  • PCのログイン・ログアウト時間を記録する
  • チャットツールの履歴をスクリーンショットで保存
  • 業務日報を自分でも管理する

2. 給与明細を毎月チェックする

給与明細に記載されている「基本給」「残業代」「控除額」などの内訳を必ず確認しましょう。
もし、契約と異なる金額が支払われている場合は、すぐにSES企業に問い合わせることが大切 です。

3. 契約書に未払いが発生した場合の対応を明記してもらう

契約書に「未払いが発生した場合の対応」が記載されているかを確認し、万が一の際にどのような対応が取れるのかを把握しておく ことが重要です。


不当な業務変更を避けるための交渉術

契約時に決められた業務内容と異なる仕事を任された場合、適切な対応を取ること が重要です。

1. 契約書を確認し、業務内容と異なることを証明する

まず、契約書に記載されている業務内容と、実際の業務が異なっていることを確認しましょう。
契約上の業務範囲が明確になっていれば、それをもとにSES企業に改善を求めることができます。

2. SES企業の担当者に相談する

直接クライアントに訴えるのではなく、所属するSES企業の担当者に相談することがポイント です。
契約書をもとに「業務内容が異なるため、調整をお願いしたい」と伝えることで、企業側に正式に対応を求めることができます。

3. 対応が難しい場合は契約解除を検討する

もし、業務変更が改善されない場合や、クライアント先の環境が悪化している場合は、契約解除を視野に入れる ことも重要です。
転職や別の案件への移動を検討し、自分のキャリアに影響が出ないようにすることを優先しましょう。

クライアント先での問題を早期に報告する方法

クライアント先でトラブルが発生した場合、できるだけ早く適切な対応を取ることが重要です。
特に、ハラスメントや不当な扱いを受けた場合は、証拠を確保し、SES企業の担当者に報告すること が求められます。

1. 問題が発生した時点で証拠を集める

メールのやり取りや、会話の録音、業務日報など、問題の証拠となるものを記録 しておきましょう。
ハラスメントのような場合は、第三者に相談し、証言を得る ことも効果的です。

2. SES企業の担当者に相談する

クライアント先での問題は、まずSES企業の担当者に相談し、正式な対応を求めることが重要 です。
企業によっては、担当者がクライアントと交渉し、環境改善を図ることもあります。

3. 改善が見られない場合は労働局に相談する

もし、SES企業が対応してくれない場合は、労働局の相談窓口や、弁護士に相談することを検討しましょう
労働基準監督署に相談することで、企業に是正勧告が出されることもあります。

まとめ

SESは多くのエンジニアにとって魅力的な働き方ですが、トラブルが発生しやすい側面もあります。そのため、契約内容をよく確認し、トラブルに巻き込まれないよう事前に対策を取ること が大切です。

また、万が一トラブルに巻き込まれた場合でも、適切な相談先を活用することで問題を解決することが可能 です。
自分のキャリアを守るためにも、今回紹介した対策を意識しながら、SESエンジニアとして安心して働ける環境を整えていきましょう。

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